さいたま市民レポート
  6 《発行日:2002年10月11日》

======================================================
<<<常設の住民投票制度を!――その@ なぜ必要か>>>
======================================================

 さいたま市の合併に至る経緯について、賛成の方、反対の方、どちらでもない方、よくわからなかった方…様々な方がいらっしゃったと思います。このように様々な立場の方がいる中で、一つだけ共通していることがあります。「住民投票で決着をつけるべきだった」という点です。
 住民投票は言わば「責任の分担」、を意味しています。この制度は万能ではありませんが、政治主体が行政主導から市民主導に変わる際には欠かせない制度となります。
 今回は、なぜ住民投票制度が必要なのかを、さいたま市の合併手続きを振り返ることで検証し、次回のレポートで、この制度を全国に先駆けて常設化した愛知県高浜市の事例などを紹介し、深めていきたいと考えています。


●●
住民起点の政治へむけて

 国も地方も「政治改革の必要性」が唱えられています。マスコミを通じて報道される数々の混乱やトラブルは、今ちょうど政治の過渡期にきていることを物語っているようです。
 「古い政治」と「新しい政治」の境界線にいる、そう考えるならば、「古い政治」とは行政主導、中央主導で既得権と結びついた特定の団体・個人が恩恵を被る政治スタイルを指し、「新しい政治」とは、住民が主導し、自立した市民のできない部分を地方が補完し、国は最後に登場し、限定された役割を果たすにとどまる政治形態、また、誰もが共通のルールの下で公平な環境の中で住民が起点となって行なわれる政治、と言えるのではないでしょうか。
 今号・次号では、このような「住民が起点となる政治」において欠かすことのできない「常設化された住民投票制度」について考えていきたいと思っています。

●●合併における最大の問題
――誰が合併の決定をしたのか

 私は、3市合併について、@「必要がない」、A「手続きにおいて市民が関与できず、行政主導であった」という点を主な理由として、「反対」の立場をとってきました。その流れで浦和市議会議員となったのであり、この点については、今も変わりないとともに、自分の力不足から合併を実現させてしまったことについて、私を支持し、期待してくれた方々には申し訳なく思っています。その意味では、自分の責任を強く認識しているところです。
 ただ、合併が実現し、新しいまちがスタートして、新たな自治の「かたち」が形成される過程に入っています。この過程を真摯に受け止め、さいたま市の改革について具体的な取り組みをしていくことに情熱を注いでいきたいと考えています。
 しかし、この合併の過程における問題点は指摘し続ける必要があります。それは問題点が、新しいまちに引き継がれているからにほかなりません。
 私が看過できない問題として、「合併までの過程に住民の意向が反映される機会がほとんどなかった」点が挙げられます。
 とくに合併協議の情報が住民に共有がなされていないこと、さらに合併の意思決定が合併協議会・行政・議会で行なわれてしまい、住民が関与できたのは、選挙で候補者を選択することだけだった、という点において、推進派の学者でさえ「さいたま市の合併は参考にならない」と発言をしているように、後の合併手続に禍根を残すことになったのではないでしょうか。

●●住民投票を行なわなかったツケ

 結局は合併の決定を行なったのは、市長をはじめとする行政、議会といった特定の人たちであり、住民ではなかったということになります。もしこの合併が「失敗であった」という結論が出たならば、誰が責任をとるのでしょうか。市長や議員は責任をとりきれるのでしょうか。
住民投票を行なった上で、その結果に基づいて合併が決定されていたらば、責任は投票する権利を有する住民に分担されていたことでしょう。このような責任の分担という観点からも、住民投票を実施してその結果にもとづいて合併を決するべきであったと考えています。
 ちなみに、合併手続の反省からかは定かではありませんが、さいたま市が誕生してからこれまで、区の境界線の線引きにおけるパブリックコメントの試み、区名の選定や総合振興計画の策定などでは、区民投票や住民が参加して課題を設定する手法が導入されるようになってきました。
ただ、それにしても、付け焼刃的な試みであり、本質的に住民が起点となった政治形態にはなっていない、つまり肝心の部分では行政主導の政治形態が継続されていると言わざるを得ない状況が続いています。
 
●●全国で始まっている住民投票の試み

 こうした状況の中で、とくに合併協議において、住民投票という制度に注目が集まっています。
さいたま市誕生の3ヶ月前に誕生した西東京市は、田無市と保谷市が合併したのですが、合併議決の直前に「市民意向調査」を行なっています。特筆すべきは、田無市長が「結果によっては合併協議の見直しもありえる」と発言し、投票の結果が軽視されない状況にあったこと、20歳ではなく「18歳以上」の住民に投票する権利が与えられたこと、そして合併協議の結果に関する総合的な情報を住民に周知する期間を1ヶ月とり、その上で実施したこと、という点です。
 また、滋賀県の米原町では永住外国人がその権利を有し、秋田県の岩城町ではやはり18歳以上の住民が投票しています。それぞれ結果にもとづいて合併の是非や合併相手を選択するという手法をとっているわけです。
 このように全国に住民投票の試みが広がる傾向があるという点において合併推進の気運というのは、賛否は別として地方自治においては面白い状況を生み出していると思っています。
 合併は性格的にすべての住民に関わりますので、住民投票が最も相応しいと言えるのではないでしょうか。こうして考えると、市域問題やその必要性など様々な争点を抱えたままの状況で行政主導と行政に依存する議会とが数の論理で急速に進めてしまった3市合併が、新市が誕生してもどこか魅力に欠ける状況を生み出しているのは、必要な手続が踏まれていなかったからだ、と考えると納得することができます。住民が「GOサイン」を出した結果の流れにたった合併ではなかったからです。
◆        ◆        ◆
 2000年4月からスタートした「地方分権一括法」により「機関委任事務制度」が廃止され、地方自治体の「自己決定権」は飛躍的に拡大されました。これによって、これまでの行政主導の方式から、政治の主体が市民主導に転換することも必然的なこととなったわけです。こうした大きな時代の流れからみて、住民投票制度の活用が一つのカギを握っていることは間違いありません。自治体政策の大きなカギを握っています。

●●さいたま市には 「3つのワン」をめざす気概をもってほしい!

 私の尊敬する議員が言っていた言葉が今も忘れられません。「3つのワンをめざす」という言葉ですが、3つのワンとは以下のことを指します。

Only 1 (オンリーワン)  …唯一の
First 1 (ファーストワン) …最初の
NO.1  (ナンバーワン)  …一番の

 これらの言葉の後ろに、「自治体の政策」と付け加えていただきたく思います。
 地方分権の時代が幕を開けています。「機関委任事務制度」が廃止されたことにより、自治体の「自己決定権」が飛躍的に拡大しました。自治体はこれまでのような中央政府の意向を汲み取る方式から、自らの課題に基づいた自治を展開する方式への転換が急務となります。
 これまで様々な自治体の試みを見てきました。「まちづくり基本条例」のニセコ町、「総合計画を最初から最後まで市民が立案した三鷹市、画期的な電子入札で談合の防止策を講じる横須賀市、議決機関としての自立に乗り出した三重県議会…このように地方分権の趣旨を最大限に生かしているしていると思わせる独創的で魅力的な政策の実施に乗り出している自治体が登場しています。
 今後の地方自治体におけるキーワードは「3つのワン」。どこよりも先に、唯一の、そして一番の政策を立案し実施すること、もちろん住民が起点となること、これが今後の地方自治体の評価の指標の一つとなるに違いありません。
 私から見たさいたま市は、周りを見て最後尾にならないように努力する自治体、である代わりに、一番でもない、そんな自治体に写ります。さいたま市は地方分権の時代に新たに誕生したわけですから、行政も議会もその利点を生かして、ぜひとも「3つのワン」の気概を持って市政運営に当たっていただきたいと思います。

--------------------------------◆◆◆ぜひ、ご参加ください◆◆◆

【土井裕之のオープン会議】
日 時■ 2002年11月3日(日) 15時〜17時
場 所■ 埼玉会館(浦和駅西口)
テーマ■ 住基ネットの現状と課題

 土井がレポーターをつとめている学習会で、さいたま市政や先進事例について学びます。9月は、小学校区単位でまちづくりを進める宝塚市の例を見ながら、近隣政府のあり方を議論し、自治会の問題点や今後の小さな自治の単位について考えを深めました。
 次回は、中央政府が半ば強引にスタートさせた「住基ネット」についてをテーマに、問題点、経過、各自治体の対応、さいたま市の対応、今後の展開などを話し合いたいと思います。

【地方自治を考える会】
日 時■ 2002年10月25日(金) 10時〜12時 
場 所■ プラザ・イースト(東浦和駅)
テーマ■ 自治会の現状と課題を聞く

 各地の先進事例やさいたま市の行政・議会運営について学習します。初心者向けで月に一回開催。主に主婦の方々が参加しています。
 9月は、廃棄物政策課の職員を招き、ゴミ問題の現状と課題を聞きました。職員の努力に評価の声も。しかし、旧浦和市域ででるゴミは「クリーンセンター大崎」で焼却されたあと、焼却灰は最終処分場に運ばれますが、そのうち50%は「フェニックス」という自区内の処分場へ行くものの、残りの灰は県内寄居や茨城など市外の処分場に捨てられるとのこと。 「札束で他の地域にリスクを及ぼしている」構造となっているのです。職員も改善策を検討しているとのことでした。
 次回は、自治会の現状と課題について、担当職員を招いて学習します。

-------------------------------------------------編集後記●
●「市民レポートを送ってほしい」というFaxを頂きました。字ばっかりで、時には誤植もあるレポートを読んでくださっている方がいると思うと、身が引き締まる思いです。
●「住民投票制度」を今回のテーマにしたのは、元大宮市議の栗原公喬さんと話をしたことがきっかけでした。栗原さんは一貫して組織に依存せず、一人で政治改革を目指し、市議となり、議員として2期活動されました。自分が支持者にこびず、どんな政治を実現するかの一点において、理解を得て支持してもらうことにより、議員として自分の意思を貫く活動を獲得してきた数少ない政治家であり、私の目標です。
●その栗原さんから、3市合併の過程で住民投票が行なわれなかった問題点を受け,「次回の選挙では住民投票の常設化を求めたらどうか」とのアドバイスを受けました。政治主体の転換、行政主導から市民主導の政治の実現のために、住民投票制度の実施をめざしていきます。
---------------------------------------------------------------------------------
▼駅立ちの予定▼
毎週火曜日 朝7時〜8時 武蔵浦和駅東側(状況によって西側も)
毎週金曜日 朝7時〜8時 南浦和駅西口
※ご通勤・ご通学ご苦労様です。毎週『さいたま市民レポート』を配付しております。読んだ感想や政治に対するご意見などありましたら、気軽にお声掛けしてください。