T 冷戦後の世界 一、冷戦後の世界は未だ新しい秩序への明確な展望が開けず、混沌とした情勢にある。いままで強固な冷戦体制によって封じ込められていた宿年の宗教、民族抗争などが噴き出し、むしろ、それらによって世界の無秩序化、不安定化が深まる傾向もうかがえる。 地域によっては、核兵器の拡散、軍拡競争などの不安もより深まり、そのうえ人類の生存を脅かす新たな問題も発生、もしくは顕在化している。それは地球環境問題をはじめ、資源の枯渇、人権の抑圧、人口爆発、飢餓と貧困、麻薬やエイズなどである。これらによって、人類はいはば自滅の危機を深めている。 このような危機は、ほとんどが五十年前の国連創設当時においては存在しなかったか、あるいは国際問題として顕在化するに至っていなかったものである。 これらは人類に共通のものであり、一国のみの努力で克服できるものではない。国際的協調によって調整し、解決していく体制を整えることが急務となっている。 二、このような冷戦後の国際環境の新しい問題状況の中で、国際連合が中心的役割を果たすことに大きな期待が寄せられている。 しかし、国連は今のところ期待される機能を充分に発揮することができず、依然として紛争処理などの対症療法的な役割を重視し、紛争や危機の原因そのものを除去する方向に向きを変えて進んでいるとはいえない。 三、軍事・安全保障の面においても、軍縮への流れは強まってはいない。特に、北朝鮮の核疑惑にみられるように、核拡散の危機は深まり、軍拡や武器輸出もいわば野放しの状態にあることは憂慮すべきである。 国連の平和維持活動も、核の廃絶、全面軍縮、武器の禁輸に向かう努力と連動して充実していかなければ、活動に伴う危険が増し、これからも派遣国の継続的な協力を得て充分な成果をあげていくことは難しい。 四、このような国際社会の社会的、政治的、軍事的な悲観要因に加えて、世界経済も足踏みを続けていたが、最近になって、いくつかの明るい要因も加わっている。すなわち、東アジアなどの一部地域で新しい成長の牽引力としての躍動が感じられ、APECの展開、ガット・ウルグアイ・ラウンドの妥協、WTOの発足などによって、自由貿易への固い決意が示されたのは明るい展望だと言うことができる。 U 冷戦後の日本 一、冷戦時代の日本は、@自由陣営の一員としての立場を貫き、できる限り陣営の利益に貢献することと、Aひたすら経済の成長拡大を図ることによって、国民生活の向上と世界経済の発展に寄与することの二つを明確な目標としてきた。 政治ばかりでなく、行政や経済の体制もこの二つの目標を円滑に遂行するために整理され、構築されてきた。そのうえ、この政治・行政・経済の強い協調関係によって二つの目標がより効果的に達成されてきた。 二、世界の二極構造に対応して二分化されていた国内の政治体制(いわゆる五十五年体制)は、冷戦の終結によって妥当性を失い、国内政治に大きな転換と流動をもたらしている。 もう一つの経済拡大主義も、それが必ずしも自動的に国民生活の向上をもたらすとは限らなくなってきたこと、世界経済からも一人勝ちの非難を招くに至ったことなど、内外の基本的な環境変化によって、時を同じくして基本的な転換を迫られるようになった。また、環境、資源、エネルギーなどの節約により、地球資源の有限性に対する認識が深まり、いわゆる大量生産、大量消費、大量廃棄の経済社会への反省の気運が高まっている。 経済の拡大発展に寄与してきた行政システムも、経済社会の転換に際して充分な対応力をそなええていないことが明白になりつつある。特に縦割り行政による内閣の調整、指導機能の低下、行政の肥大化、過剰規制などの弊害が目立っている。 政治、行政、経済の協調体制も当初の役割を終えるに伴って、癒着と腐敗の体制に変質し、リクルート事件や佐川事件が発覚するに及び、国民的非難を浴びるに至った。 しかし、いまのところ、われわれは今までの二つの目標に変わるべき明確な目標を持ち得ないまま、政治も行政も経済も混迷を続けているのが現状である。 三、この中にあって、「細川内閣は従来の政治、行政、経済システムを改革するという歴史的事業に着手し、さらに、行政改革、経済改革においても、まず旧体制の弊害を除去するため、規制緩和、地方分権、内閣の調整機能の強化、情報公開などの懸案に意欲的に取り組む一定の方向性を示した成果は大きい。 米ソの握手によって冷戦構造が終焉をみたように、平成六年六月末の村山政権の発足によって自社対決の五十五年体制は終わりを迎えた。このことにより、これまでの離合集散は、選挙制度改革の是非や自民対非自民、もしくは今までの行きがかりに支配された傾向にあったが、これからはいよいよ「日本の進路」の選択をめぐる本格的な政界の流動と再編が始まることになる。 四、村山内閣は発足以来、政治改革関連法の総仕上げ、ガット・ウルグアイ・ラウンド合意に基づく法整備、税制改革をはじめ、歴代の内閣から引き継いだ懸案のほとんどを処理した。そのうえ、被爆者援護法などの長年の懸案についても合意の形成に成功し、政策面においても「五十五年体制」の大筋の終着を画した。 五、阪神淡路大震災は、日本の都市の脆弱さのみならず、政治と行政のシステムの不備をまざまざと示すことになった。これを契機に、危機管理体制、官邸機能の強化、公共事業の配分見直しをはじめ、行財政改革の断行を強く進めなければならない。 今後の政界再編の中にあっても、また、政治と行政の改革においても、新党さきがけが「政治の牽引力」として果たすべき役割は重大である。